LIVEDOG BLOG

娘は戦場で生まれた

 

「娘は戦場で生まれた」というドキュメンタリー映画を観てきました。渋谷シアターイメージフォーラムにて。

 

シリアで最も人口の多い都市にして、最後の反体制派の拠点として熾烈な内戦の戦場となり、シリア政府軍とロシア軍による攻撃にさらされ続けたアレッポ。
その砲撃や空爆が砂塵を巻き起こす、死と隣り合わせの状況の中でカメラを回し続けて、2016年にアレッポが陥落するまでを、その内戦中に母親となった一人の女性が内側から記録したドキュメンタリーです。
その映像の要所要所に、赤ん坊を育てる母親の視点で描いた困難やささやかな喜びが織り交ぜられ、戦争の悲惨さとのコントラストと相まって強く胸を打ちます。

 

この映画を観終えたあと、さまざまな想いが湧き上がってきますが、そのうちの一つが、私たちの無力さ。
シリア政権軍やロシア空軍の爆撃が激化したとき、彼らはそれを世界に伝えようとし、「きっと世界はこれを止めてくれる」と期待をかけます。しかし、世界は動かなかった。日に日に砲撃や空爆が激化し、病院の床は血に塗れ、死体の数が増えていく。やがて彼らの声は「こんなことを世界は許すのか」という嘆きに変わります。
その「世界」には「私たち」も含まれています。

 

この映画が突きつけて見せる私たちの無力さ、無関心さはきつい痛みをともないます。
自分たちの声で何が起きているのかを伝えたい、映画を見た人に真実を知ってほしい、身近に感じもらって、連帯感を持ってもらいたい。母親、ワアド・アルカティーブさんは言います。彼女らが経験したことは、決して特別なことなのではないのだと。

 

そして、シリアでは今も独裁者が罪のない人々を殺し続けていて、私たちはそれを許しているのです。

 

 

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| 映画のこと | 19:58 | comments(0) | - |
ジョジョ・ラビット

 

映画「ジョジョ・ラビット」を観てきました。

根底に戦争、レイシズム、全体主義への怒りを込めたメッセージを置いて、その上に一人の少年の成長の物語とささやかなロマンスを乗せ、苦味の効いたユーモアでクレープのようにさらっとくるんだような作品でした。

登場人物たちがみなキャラが立っていて、それぞれが個性的な怪演を見せ、エンターテイメントとしてもとても楽しめます。

 

それにしても…、それにしても、ヒトラー。

もう75年も経つというのに、いまだに数多くの映画や小説の題材として取り上げられるのだから、その遺した傷の深さというものをあらためて思わずにはいられません。

というか、もしかしたら、現代の人々がそれをすでに忘れつつあり、、世界のところどころに全体主義の萌芽が散見されるから、警告の意味でこのような作品が絶えないのかもしれません。

 

 

 

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| 映画のこと | 20:10 | comments(0) | - |
映画「春画と日本人」のこと

 

四年前、大英博物館で成功を収め、好評価を得た春画展「Shunga:Sex and pleasure in Japanese art」を本国日本で凱旋巡回展を開こうとしたら、国内ではことごとく開催を拒否され、結局はアクセスの悪い小規模な私立博物館での開催、しかし、フタを開けてみれば3ヶ月で21万人の来場者を集めるという、ちょっとしたエポックメイキングな出来事がありました。

映画「春画と日本人」は、その際の関係者たちの悪戦苦闘を描き、日本人の文化芸術に対する保守的で画一的な価値観や、お上への不要な忖度とともに、自ら表現の自由を放棄する姿勢に警鐘を鳴らしたドキュメンタリーフィルムです。

良いタイミングでの公開ですね。

 

私も四年前のこの展示会は前後期ともしっかり足を運びました。

平日にも関わらず、いくつかに分かれた展示室からは人があふれんばかりで、特に若い女性が多かったことや、そこに猥褻な空気は欠片ほども無かったこと、どころか、春画の発するおおらかさや幸せな空気が、観覧者たちの顔をほころばせていたことが強く印象に残っています。

 

この映画は、芸術とは作品単体で語られるものではなく、受け止める側の心のありようを含めて語るべきものだということを私たちに教えてくれるドキュメンタリーでした。

そして、表現の自由の基準を「誰か」に委ねてはいけないということも。

 

ポレポレ東中野にて公開中です。

 

 

 

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| 映画のこと | 23:10 | comments(0) | - |
映画「DOGMAN」のこと

 

公開中の映画「DOGMAN」を見てきました。イタリアのへんぴな街でトリミングサロンを営むパッとしない中年男性が主人公です。東京の片隅でトリミングサロンを営むパッとしない中年の私としては、妙にシンパシーを覚えてしまい、ちょっと苦手なジャンルの映画ではあるようだけど、見逃す手はないかなと。
行きましたよ、はるばる渋谷まで。

 

犬をこよなく愛し、猛犬も手なずけ、コンテストでも入賞する優れたトリマーである主人公、でもちょっと気が弱くて不器用な生き方をしています。その気弱さ、不器用さをつけこまれ、暴力的で街の鼻つまみ者になっている男にいいように利用され、やがては悪事の片棒を担ぐことになり…

 

途中から、やがて訪れるものに対しての予感はジワジワとありました。やはり、その結末は少々苦手なものでありました。見終えた後、胃の中をグルグルかき回されるような気持ち悪さと格闘しながら、再開発著しい明治通りをフラフラと渋谷駅に向かっている自分がいました。
ここまで、ヘヴィでバイオレントだったとは…

 

しかし、決して後味の良い映画ではなかったのに、少々時間が経ったいま、その暴力場面まで含めて、映画全体に漂っていた不穏さと哀切さが、いつまでもあとを引きそうな気がしています。そして、その哀切と不穏を演出していたのが実は犬たちだったのです。
そのために、この映画はトリミングサロンが舞台だったのかなと。

もう一回見て確認したいけど、その勇気はありません(笑)

 

 

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| 映画のこと | 20:27 | comments(0) | - |
映画「東京裁判」のこと

 

映画「東京裁判」を観てきました。

極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判を、日本の軍国主義の歩みや当時の世界情勢とともに綴った、4時間半に及ぶ長編ドキュメンタリーです。

 

眼目となる裁判の映像はデジタルリマスターされ、判事たちや弁護団、そして被告たちの微妙な表情の動きまでわかるくらい、残酷に再現されています。

 

A級戦犯という禍々しい言葉とはまったく似つかない、憐れをもよおすほどの被告人席の老人たち。その中にあって、戦争指導者として位置づけられた東條英機の姿がひときわ印象に残りました。

むやみな断罪も賛美も送るつもりはないけど、あの戦争を主導して、ポツダム宣言受諾後には自分の胸に拳銃を当て、奇跡的な回復後に弾劾の場に引き出されたパッとしない老人が、ウェブ判事の「Death by hanging 」を聞いて、無言でうなずいたその小さな姿が目に焼き付いて離れません。彼はそれまでのジェットコースターのような10年ほどの間、何を思っていたのだろう。彼にとって、日本国民とは、戦争とは、天皇陛下とは、いったい何だったのだろう。

被告人席に座るこの老人たちの態度や表情から、300万とも言われている命の重さに対する思いが感じられないのは、どういうことなのだろう?

 

日本とアメリカが戦争したことを知らない若者が増えているという現代。あの戦争と、東京裁判の意義をあらためて考えさせられる映画でした。広い意味では、正義も法も蔑ろにされる戦争において、戦勝国が敗戦国を裁く理不尽さを。東京裁判に限定するなら、この裁判のおかげで、今の日本とアメリカ、ひいては東アジアにおける日本の立ち位置が決まり、その禍根がさまざまな形で現在も噴出している現実を。

 

4時間半は長いけど、時間を割いて観る価値のある作品です。渋谷ユーロスペースにて。

 

今日は8月15日ですね。

 

 

 

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| 映画のこと | 17:51 | comments(0) | - |