先日発表された直木賞受賞作品です。あらすじにはあまり触れない方が良いタイプの作品かと思うのでそれは割愛しますが、輪廻転生とか生まれ変わりといったことが主軸となっている物語です。
人が想いを残したままこの世を去らなければいけなかったとき、その想いはどこに行ってしまうのでしょうか。その想いの行き場を与えるべく作られたものが霊という現象であったり、怪談という物語であったりするなら、生まれ変わりというものはその想いが引き起こす奇跡として設定されるものなのかも。
クライマックスを読んでいるときにぼんやりと「あぁ、この場面は『ゴースト〜ニューヨークの幻』みたいだなぁ」と思っていたら、最後の一行を読み終えたときに頭の中でライチャス・ブラザースが鳴り始めてしまいました。周りに誰もいないときでよかったです。
もし今日、街を歩いてるときにふと目があって微笑まれたような気がした女の子(あるいは男の子)がいたとしたら、それはもしかしたら…
「君にちかふ 阿蘇の煙のたゆるとも 萬葉集の歌ほろぶとも」
昭和の歌人、吉井勇さんという人の歌だそうです。この本で知りました。良い歌だなと。
岩波書店は佳い本を出しますね。